山の道を走る。
ゆっくりと、そしてゆっくりと。
辛うじて舗装はされているが、車一台がやっとの道。
道端の木の枝が大きく垂れ下がって視界を塞ぐ。
ぐるっと大きく曲がると急な上り坂、そしてまた下る。
いったい何のためにここを走っているのだろう。
気まぐれ?
そうかもしれないしそうでないかもしれない。
鳴き声の方を見やると、カラスが頭上から胡散臭気に見下ろしていた。
そのうち電柱が見えてくる。
電線もあるが、それがどこから来てどこへ行っているのかはわからない。
この辺りに家は無いのだ。
暫く登り続けた先で、ようやく視界が開けた。
平に削られた跡に工事車両が止まっている。
いつもそこに止まっている。
崩れかけの掘建て小屋があるが、そこを覗いた事は無い。
辺りを見廻す。
ここだけ時間が止まっているみたいだ。
そうでないことは肌や耳が教えてくれるのだが、そう感じる事は嫌いじゃない。
明日の保証なんてどこにだって無いのだから。
人は未来を恐れるほど過去にしがみつく。
過去を振り返りたくないなら未来を求めるしかない。
私はどこに位置していたいのか、ずっとそれがわからない。
だから、この場所が好きなのかもしれない。
人知れずとは人知らずかな
みたまんま